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IoTの超素人から素人を目指す


2015-08-08
Takuo Kihira

元同僚が独立してIoTをメインとした仕事をしているということで、IoTについてよくわかっていないのをいいことに、本日事務所に押しかけて色々と教えてもらいました。せっかくなので、自分の知識の整理のためにもブログ記事にまとめることにしました。

ただこの記事は、伝聞で聞いた情報を元に素人がまとめたものですので、記憶違いなどによって大きく正確性にかけることが予想されます。この記事は、裏もそんなに取っておりません。その前提でお願いします。

IoT (Internet of Things)とは

さて、IoTとはInternet of Thingsの略で、モノのインターネットとか呼ばれたりします。しかしこの言葉は「Web 2.0」や「マルチメディア」と同じようなバズワードで、明確な定義はないようです。よく漠然と「いろいろなモノがインターネットに繋がってる」みたいなニュアンスで語られることが多いのですが、語る人によって定義がまちまちであり、懐かしの(これもバズワードですが)「ユビキタス」との差別化がイマイチつかない印象を個人的に持っています。

しかし、ユビキタスの時代に比べると、コンセプトは同じ「インターネットに繋げる」であるとしても、技術的にはいろいろな革新があります。その中でも、特にBLEと呼ばれる技術を効果的に利用したものが(自分の考える)IoTに近い、という印象を持っています。今日はIoTに関して、BLEを使うことで何が出来るのか、を主題にします。

BLE (Bluetooth Low Energy)とは

BLEとは「Bluetooth Low Energy」の略です。Bluetoothに関しては、ワイヤレススピーカーなどで親しんでいる方も多いと思いますが、BLEに関してはとりあえずBluetoothの事を忘れて大丈夫です。BLEは、「省電力で最大100m程度の短距離の通信が出来る機能」だという認識で、多分大体あってます。また一般的なBluetoothと違って、必ずしも機器と機器のペアリングを必要としません。そして、スマートフォンでアプリをインストールすることによって、スマートフォンからBLEの通信を送受信することも出来ます。

今までのガジェットと大きく違う点は、ボタン電池1個で半年〜1年以上の寿命がある、と言われていることです。腕時計やもっと小さいサイズのガジェットが、BLEでデータを定期的に発信し、それを別の端末で受信してデータを見ることが出来ます。この「データを定期的に発信する」という機能を、特にビーコンと呼ばれることがあります。AppleのiBeaconという仕様もビーコンの利用形態の一種です。

一般的には、ビーコンのようにただデータを発信するだけではなく、何らかのセンサーと一緒に使われることが多いです。例えばモーションセンサー(加速度センサー)と組わせることで、日々の運動データを収集してスマートフォンで健康を解析することが出来ます。位置センサー(GPS)と組み合わせることで、行動データを収集して行動記録(日記)をつけることが出来ます。

このように、何らかのセンサーとBLEを組み合わせることで、データを定期的に収集してそれを別の価値に置き換える、というガジェットを「IoT」と呼ばれることが多い印象があります。インターネットはあまり関係ないことが多い気がします(というより、このご時世、どんなサービスを作ったところでバックエンドにインターネットを利用するのは特別ではないですからね)。データを収集するという特性上、ビッグデータと絡めて話されることも多いです。

BLEの受信側・発信側

このように便利なBLEですが、実際にサービスでどのように構成されるかは、意外と複雑だったりします。

まず前提として、BLEを組み込んだいわゆる省電力ガジェットは、省電力であるが故、他の機能を持たないのが普通です。例えば液晶などで表示することはありませんし、スマートフォンなどからBLEが積極的にデータを受信することも(ペアリングなどを例外として)ほとんどありません。省電力ガジェット自体が直接インターネットに接続されることも滅多にありません。そういうわけで、基本的に省電力ガジェットは一方的にBLEでデータを発信することが多くなります。

またBLEのデータを発信出来るのは、省電力ガジェットだけではなく、一般のスマートフォンでも可能です。この場合は省電力にこだわる必要はないので、もちろん画面にデータを表示することも出来ますし、インターネットにも接続できます。スマートフォンにアプリのインストールが必要になりますが、ガジェットを購入する必要がないのもポイントです。同じBLE発信端末でも、その特性は大きく変わります。

もちろん省電力ではない、電源につなぐようなBLE発信の専門端末もあり得ます。iBeaconなどで店舗情報を発信するような場合は、ボタン電池やスマートフォンなどではなく専用端末を用意するが普通でしょう。

さて、一方BLEのデータを受信出来るのは、基本的にはスマートフォンになります。スマートフォンは発信も受信も両方出来るのがポイントです。しかし現状、スマートフォンでBLEのデータを受信するためには、専用のアプリをインストールする必要があります。近い将来、アプリをインストールしなくても、ブラウザでBLEをキャッチすることが出来るようになるように仕様策定が進んでいるようです。

また、受信専用のゲートウェイ端末が存在することもあります。これはインターネットのルーターみたいなもので、BLEで送られたデータを一旦ゲートウェイ端末が受信し、そこからインターネットを介してデータを外部に送信する、そのような専用端末です。

よくあるパターンとして、BLEの発信側はインターネット接続を持たず、受信側がBLEのデータをインターネットに送信する機能を請け負う形が見られます。もちろんそうしなければいけない理由もなく、インターネットにデータを送信する必要もないので、そこはサービスの内容に応じて変わってくることになります。

BLEを利用するサービスの構成

さて、上記のような受信・発信のデバイスを利用し、いろいろなサービスの構成が考えられています。

まずは少し前述した、自分の行動をトラッキングしてスマートフォンで確認するガジェットがたくさんあります。日々の歩数や睡眠状況、運動時には心拍数やペースみたいなものをログとして残し、後で見ることが出来るようなツールですね。こういったツールはスマートフォンのアプリでもあるのですが、小さなガジェットであれば一日中身体につけっぱなしにすることが出来るので、そういったガジェットの人気は高いです。

これが人間の身体の健康トラッキングだけではなく、例えば車のOBD2に繋げることで車の情報をトラッキングするようなガジェットもあります。そういう情報を元に整備工場が整備のオススメを出したり、保険会社が急停止などの安全運転データを見ることで保険料を変更することが出来る、というような使い方もあります。応用として、タクシー会社が大量のタクシーの情報を常時集めるであるとか、工場で働いている人の健康状態を把握する、などの使われ方もあります。

次に、iBeaconに代表されるような、ビーコンとして情報を発信し続けるサービスもあります。例えばスーパーでBLEを発信し、スマートフォンのアプリでそれを受信するとクーポンが手に入るようなサービスです。こういうサービスはすでにかなりリリースされているのですが、受信側のスマートフォンにアプリをインストールしなくてはいけないため、あまり使われている印象はありません。

面白いところとしては、akerunのようなスマートロックがあります。Airbnbなどで鍵を毎回宿泊客に渡すのが大変であったり、コワーキングスペースなどで鍵を管理するのが大変である、というような用途に対して、BLEで認証した相手に鍵を開けるというソリューションサービスがあります。鍵はネットにつながっており、そこでBLEの認証情報を確認して鍵を開ける仕組みです。

BLEの課題

このようにBLEを使ったサービスは様々ありますが、いまいち一般的な層に普及しているとはいいがたい状況です。何が問題でしょうか。

一つは、スマートフォンを絡めるサービスは現状アプリのインストールが必要である、ということです。スマートロックのように、自発的にサービスを利用する場合にインストールは障壁になりませんが、iBeaconでお店の情報を発信する場合のように、広く使われて欲しいサービスにとってユーザーのインストールを要求するのは相当高い障壁になります。

もう一つは、省電力デバイス単体がそこまで安くないことです。1つの省電力デバイスが、今大体2000円〜3000円ほどになります。大量に発注すると安くなるかもしれませんが、仮にこの値段でたった1万人にデバイスを配布しようと思っても、1000万円オーダーのコストがかかってしまいます。ホットペッパーのように、ビーコンを街中で配るようなサービスを実現するのはまだ難しそうです。

IoTという名前を頻繁に聞く割に、いまいち世の中に出回っていないのはこれらが原因なのではなかろうか、と考えております。ただ、インストールに関してはブラウザでBLEを受信するようになればインストールは不要になりますし、BLE端末の値段も将来もっと安くなるでしょう。近い将来に、IoTが大きく普及する可能性は十分にあると思っています。